森林たくみ塾とは

2023-05-28 21:26:03

森林たくみ塾

私がウェブページを作成し、発信を行おうと考えた理由の一つとして、あまり知られていない木工職人のキャリア形成についてのひとつの具体例を提示したいというのがあります。

私の場合は家族や友人などを含め、周りに木工と関わりのある人間がいませんでした。

書籍やネット上で情報を探すも絶対数は少なく、ネガティブな情報も多い中、木工職人になるための道筋は見えづらく、リアルな情報は多くはありませんでした。

そして、いざ私自身が木工職人になるべく修行をする際は同じように木工職人を志す人に少しでも理解してもらえるような情報を発信しようと考えていました。

そういった経緯もあり、森林たくみ塾で学んで感じたことをブログとして発信しています。

ただ、森林たくみ塾とはどういった組織なのかということにこれまで全く触れずにいたので、その紹介をできればと思います。

オークヴィレッジ

https://www.oakv.co.jp/

森林たくみ塾の前に、オークヴィレッジについて簡単に説明します。

オークヴィレッジは今年で創立 50 周年を迎え、木工家具や住宅を製造販売しています。

50 年以上に大量生産・大量消費の社会に疑問を投げかけた創設者らによって始まりました。

「お椀から建物まで」「100 年かかって育った木は 100 年使えるものに」「こども一人、どんぐり一粒」など、自然との共存を目指した木工職人集団です。

その創設者が自然との共存を目指した持続可能な社会を構築する上で、次世代を担う人材の育成のため、1991 年に設立されたのが 森林たくみ塾 です。

https://www.takumijuku.com/

2ヶ月経って

ここからは、たくみ塾という組織について私なりに考え、感じた点になります。

高山市にある煥章館という図書館には創設者のひとりである稲本正さんの著作が豊富に揃えられており、それを読むと森林たくみ塾を創設するに至った経緯が詳細に書かれています。

そこに書かれている内容は現在でも大きく変わっていません。

私はたくみ塾生の 34 期にあたるのですが、創設時の思想・姿勢が一貫していることはただただ驚くばかりです。

実践主義

中でも実践主義というのは徹底されているように感じ、たくみ塾の教育においても一番の特徴であると言えると感じています。

たびたびブログでも書いていますが、たくみ塾で過ごす時間のほとんどは木工製品の製作を行う実習時間になります。

スタッフの指示を受けて、初日から機械を使った加工や仕上げ、塗装、梱包作業などを行なっています。

いわゆる実務と遜色はないもので、教育の側面は薄く、職場に新人として働いているような状態です。

スタッフと塾生の間に教育者 - 生徒という関係ではなく、仕事の先輩 - 後輩関係というのが適切と感じます。

どこにでもある職場と同じようにスタッフにはスタッフの果たすべき課題があり、時間も有限です。

どこにでもある職場と同じように良好な人間関係を形成するのも円滑に実習に取り組む上で重要になります。

このあたりは社会生活を共同で送るあたり当たり前なことなのですが、木工を教えに来てもらう生徒というスタンスでいると齟齬が発生しうるのかなと感じます。

特に塾生は年齢のレンジも広いので多種多様な生徒がおり、その中でお互いに尊重し合えること、素直に新しいことを吸収できることなどは大きく成長する上で必要な要素になるだろうと考えています。

学びの場

実習の場は入念に用意されたカリキュラムではないため、常に緊張感があります。

初級生は作業に不慣れのため、進捗は遅れがちになることもあれば、品質が必要なレベルに達していないことも十分考えられます。

そのため、オペレーションは画一的なものになりづらく、ルーティンワークではなくなり、常に本質を理解して加工を行うことが求められます。

これは初級生に限った話ではないと感じており、スタッフ陣は不慣れな初級生に指示して納期に間に合わせるためのマネジメント力の鍛錬の場として機能しているような印象を受けますし、中級生はより初級生とスタッフの中間に位置するポジションとして円滑にプロダクトが出来上がるよう、フォローできる必要があります。

つまり、全員が役割を果たしてこそプロダクトが納期通りに製作できるわけで、予め用意されたバッファなどは想定されていません。

本質を理解する

たくみ塾でよく聞くフレーズで「仕事を減らす」というのがあります。

時間をかけて加工を行っても、その作業で何を達成しようとしているかを理解していないと、状態を悪化させてしまっているケースがあります。

そうなるとリカバリーするために別の作業が発生してしまうため、結果としては仕事が増えてしまいます。

大事なことはその作業を行うことでどういう状態になっているのかを理解することにあります。

そして、その作業を丁寧に行い、仕事を着実に「減らす」ことが大切になってきます。

例えば、手磨きを行って木の表面を滑らかにする作業の場合は最終的にどういう状態になっているかを理解する必要があります。

今週やった作業の中に R = 15mm の曲率のかまぼこ状に加工する必要があったのですが、目で見ても違いはほぼ分からず、手で触ってその違いを感じる必要がありました。

言われた通りに見様見真似で作業していると、手を動かすことに終始してしまい、結果として削りすぎてしまい滑らかなかまぼこ面はできませんが、滑らかに仕上げることを意識するとうまくいくように感じました。

説明を聞いて、実際手を動かして、自分の中に腑に落ちるような感覚を掴むことが大切なようです。

環境教育

毎週水曜日の実習後にある講座や月 2 回の全日講座では環境教育の一貫として座学やフィールドワークがあります。

内容的には大学の森林学科などで学ぶ内容ではあると思うのですが、そうした機会がなかった私にとっては知らないことばかりでした。

また、提供されるフィールドワークの機会は京都にいたままでは体験できないようなことが多く、まさにこうした経験や関係性を求めて高山に来た、という感じがします。

おかげさまで山に入り、さまざまな樹木を知ることで、山を歩く楽しさを理解することができました。

技術講座

毎週金曜日の実習後は道具や機械の利用方法を学ぶ技術講座があります。

現在、道具がまだ届いたため機械講座が中心になっていますが、道具が届き次第、仕込み方や実際の製作課題に進んでいきます。

製作へのモチベーションは高まってきているので、早く道具を手に入れて、製作したいなと感じています。

製作課題

まだ始まってはいませんが、技術講座が進むと実際に製作課題が渡され、自分で設計から製作まで行います。

まとめ

技術講座や製作課題はまだ始まっていないので、まだまだ木工修行の全貌は見えていないところもあります。

しかし、たくみ塾において実習は大半の時間がかけられていることは間違いなく、そこが大きな特徴となっています、

また、だからこそ実習をどういうスタンスで取り組むかが、製作課題でうまく段取りを整えることができるかにつながっているように感じています。

また、気づきがあれば随時更新していきます。

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