GW も終わり、木工修行も再開しました。
今週から取り組む製品も新しいものに変わり、前回に比べると大きな製品を扱うことになりました。扱う材の大きさも大きくなった分重たくなり、体が悲鳴をあげる毎日です。
さて、森林たくみ塾では日々の実習以外にも月 2 回、全日講座があります。全日講座では実際にたくみ塾の裏山で課外活動を行い、五感を使って普段扱う木の自然の姿を観察する機会があります。また、全日講座以外でも任意でさまざまな活動に参加する機会が提供されており、日々木工に対する多様な学びの場が提供されています。
今回はその中のいくつかを紹介できればと思います。
4/29 にオークヴィレッジが主催する植樹祭に参加してきました。
オークヴィレッジにはシルヴァンクラブという会員組織があり、植樹祭は会員向けに開催されたイベントですが、たくみ塾生もどうぞということで参加させて頂きました。
午前中はオークヴィレッジが管理する山を散策し、山菜採りを体験し、山菜を使ったピザを頂きました。午後からはクロモジ、イロハモミジ、ヤマザクラの苗を頂き、山に植えました。
全日講座で一日、たくみ塾の裏山で木の葉っぱを 50 種類以上集めるという経験をしました。
実際に山を散策する前に知っている木の葉っぱを描くということをしたのですが、私が知っていた葉っぱはマツ、ヒノキ、カエデ、イチョウ、ホオといった特徴のある葉っぱしか出てきませんでした。
山に入っても木や葉に注目して歩いたことがないので、特徴的なもの以外は知らないということを知りました。
それから、実際に山を散策すると見たことがあるけど名前は知らないといったものが多く、塾長や木に詳しい同期の解説を聞きながら、「これがコナラの葉か」「はじめて聞く木の名前だ」などと少しずつ自分の中で咀嚼していきました。
そうして数時間をかけて 50 種類以上の葉を採取し、塾に戻ってひとつずつ樹木図鑑を見て名前を明らかにしていく作業を行いました。
樹木図鑑は初めて扱いましたが、樹木の形状や葉の形状、葉がどのようについているかによって細かく分類されており、こうした規則性を見出す生物学者というのはすごい人たちなのだなと謎に感心していました。
まだまだ木を判別できるレベルにはなっていませんが、少しずつ樹木の名称を覚え、特徴を掴めていけるよう、山を散策する機会があれば木を見るようにしたいと思います。
木工作品を製作するにあたって、漆は欠かせない存在です。
漆仕上げは美しいだけでなく、作品を長持ちさせるという働きもあり、漆はとても優れた塗料だそうです。
高山市は春慶塗りが有名な地域でもあります。
そうした漆を扱う職人が発起人となって、飛騨漆の森プロジェクトが発足し、昨年度からたくみ塾もお手伝いをしています。
高山市内から 30 分ほど車を走らせた山の中で漆の苗を 100 ほど植樹しました。
漆の苗は 1 ~ 2m くらいの高さの苗で、それを埋めるための穴を堀り、土を被せて周りを押し固めます。
ただ今回植樹することになった場所はもともとウドが生えていた場所で、ウドの太い根っこが残っていたり、大きな石がたくさんあるような場所だったこともあり、穴掘りも一苦労でした。加えて、雨が降っていたこともあり、5 本ほど植えると既に疲労感が。3 時間ほど働いて、作業がひと段落した頃にはもうへとへとになっていました。
実際に春慶塗りの塗り師の方も一緒に作業しておられて話を伺うことができたのですが、植樹した苗が成長して実際に樹液を採取できるようになるには最低でも 8 年はかかり、一度採取すると取れなくなると聞きました。そのため、毎年いろいろな場所で植樹を行っているみたいです。一本の木から採取できる樹液の量も 200cc 程度、採取するにも 20 日程度かかると聞きました。
予備知識が全くないまま(漆掻きが何かも知らなかった、樹液を採取するのを漆掻きというみたいです)行ったのですが、漆がとても貴重なものであること、それを理解して漆の植樹を続けていく人がいるということを理解し、体験することができ、とてもよかったです。
「木を植えた男」は 1953 年に発表されたジャン・ジオノの短編小説で、生涯をかけて植樹を行った男を描いたフィクションです。
私がこの本を読んだのはつい最近で、オークヴィレッジの創設者である稲本さんの本に記載があって読んでみたいと思い読みました。稲本さん自身も植樹活動を行なってらっしゃいます。
地球温暖化問題へのアプローチとして次世代の技術を研究する人がいる中で、二酸化炭素を吸収する唯一の機能である光合成を行える植物を尊重し、植樹するという選択は筋が通っているように感じ、とても共感することが多いです。
そのため、私にとって「木を植えた男」は美しい生き方だなと感じるし、いずれは私も植樹活動を率先して行なっていけるようになりたいなと思っていました。
今回の植樹活動はそんな野望の第一歩を踏み出した、私にとっては少しドキドキした体験となりました。