林業を理解したい

2023-06-25 20:12:01

林業

高山もすっかり暑くなってきました。

工房周りの山々の緑も濃くなってきて、晴れた日には夏空と相まってとても気持ちがいいです。

国有林散策

今週は全日講座で高山にある国有林を散策しました。

道中は樹種の同定を塾生間で楽しんだり、塾長の小木曽さんから木に関する様々な話を聞かせてもらいました。

その中で帰り道に日本の林業について色々と教えて頂いたのですが、私の中でとてもモヤモヤしており、筆を取るに至っています。

なお、現時点でも考えがまとまっていないので、一時的なアウトプットになっている点、ご了承ください。

なぜ林業?

言わずもがなですが、林業従事者は山林から木を伐採し、木工職人はそうして伐採された木材を加工し、製作を行います。

林業についてよく知っていることは、製作活動を行なっていく上で重要になります。

例えば、国産のナラ材はどんどん伐採量が低下しており、今はそのほとんどが北海道産だそうです。北海道で採れなくなると、市場に供給される量は少なくなります。

木は成長して、加工できる太さになるまで長い年月がかかります。伐採できる量に限りがあり、価格にもトレンドがあることが予想されます。

製作活動を行う地域でどういった木材が供給されているのか、どういった課題を抱えているのか、そうした事情を把握した上で製作活動を行うのが望ましいと考えています。

木は豊富にあるの?

日本の森林面積は減少傾向にあると思っていたのですが、過去 40 年間横ばいだそうです。さらに木材として利用できる森林資源量を示す森林蓄積の値は過去最高となっています。

つまり、木は豊富にあるということです。

国土の森林率を国別でも見ても日本(68.2%)は高い森林率を誇っており、日本は世界有数の森林国だそうです。

地球温暖化問題へのアプローチとしての植林活動は海外の熱帯林のお話だそうで、日本における事情はまた異なっているのだそう。

何が問題なの?

日本には森林資源量が豊富にあって大変喜ばしいことのように思えます。

では、何が問題なのか。

それは豊富にある森林資源量が使われないことです。

理由のひとつとしては木材のコストです。海外の森林は平らな土地に育っているのに対し、日本の森林は急な斜面に生息しており、伐採して運び出すコストが割高になります。また、急な斜面で育つために曲がった木が多く、製材するコストもかかってくるようです。

こうした理由から輸入材が低コストかつたくさん手に入りやすいため、国内で使用される木材の 7 割以上は輸入材となっています。今や日本は世界 2 位の森林国でありながら、使用する木材のほとんどを輸入しているいびつな状態となっています。

このような背景から林業は今では「食っていけない」産業となっています。政府からの補助金でなんとか成立している産業というのが現状です。

日本で林業の抱える問題というと、ここにその根っこがあるようです。

産業を立て直す方法は?

補助金を貰わないと成立しない産業であれば、自然淘汰されていくのが経済の基本ルールのような感覚があるのですが、農業や林業に関しては一概にはそう言えないものなようです。

林業については治山治水というように放置森林によって自然災害を誘引することになるので、適切な管理を行うのが好ましい。

であれば、山林管理は行政運営上に必要な仕事になるはずなので、林業が衰退するのはとても疑問です。適正な価格が支払われるべきのように感じます。木材を売るのが本業ではなく、山林管理のサイドビジネスとして木材を売るという形態があるべき姿な気がしていますが、このあたりはまだまだ不勉強でわかっていません。

すべての木材が使えるわけではない

現在、日本の人工林と呼ばれてる森林にはスギ・マツ・ヒノキなどの針葉樹がたくさん育っています。

森林蓄積の 2/3 は人工林なので、大半が針葉樹ということになります。

ただし、例えばカラマツは伐採しても使い道がないそうです。木としてとてもねじれやすく、使おうとすると大変なので、粉々にしてパルプになるか、バイオマス燃料として使われたりするんだそうです。

パルプやバイオマス燃料として使われているので全く無駄ではない気もしますが、固定した二酸化炭素は放出されてしまうので、住宅や家具として有効利用される方がより環境に配慮していると言えます。

樹種が針葉樹に偏っているということも国産材の使用が促進されない理由になっています。

で、結局木工職人になってやりたいことは?

私が木工職人に無事なれたとして、どういうメッセージを発信していくのがいいんだろうか。

そういうことを考えるとすごくモヤモヤしてくるのです。

入塾以前は問題はもっと単純に考えていました。木は持続可能な素材で、木工製品を使うことは環境負荷が低い。地域で余っている材で家具を作り、植樹をして山に還元していく。このサイクルを続けていくライフスタイルを提唱していきたい。

大きくは外れていなさそうですが、私がしたいことはなんだっけ?と考え直したくなるようなテーマです。

Wedge 6 月号が林業の特集を組んでいるので、読んで理解を深めてきます。
https://wedge.ismedia.jp/ud/wedge/release/20230520

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