森林実習

2023-07-17 15:54:05

森林たくみ塾

本格的な夏がはじまりました。

7 月はアイテム数が多く、工房の稼働率は高めです。

高山でも 30 度を超える日が続き、機械の排熱で工房内はとても暑いです。汗が噴き出し、舞い上がった木屑が肌に引っ付きます。夏の作業は想像以上に過酷です。

水分摂取をこまめにしながら、日々頑張っております。

森の手入れについて

先日の全日講座では森林実習としてオークヴィレッジ敷地内の森の手入れを行いました。

森の手入れについては数回に渡る座学でその意義を学んできました。

森の中では植物による光を巡る生存競争が行われています。

日光を浴びるために樹高を高くする木もあれば、葉を大きく開いたり、葉の数を増やしたりとその方法は植物によって多種多様です。

また、森を立体的に見ると樹高が高い木が日光を占有し、こぼれてくる日光が中低木層に届き、最終的に林床にたどり着きます。

あまりに木が密集していると日光が十分行き渡らず、成長が阻害されてしまうため、適度に森の手入れを行うことで森の状態を良好にしていきます。

下刈り

まずは下刈りを行いました。

下刈りとは森の地表面付近を覆っている雑草木を刈り取る作業のことで、今回の場合は笹が茂っていたのを刈り取りました。

笹は繁殖力が強い植物で、放置しておくと地面一体を覆ってしまいます。成長すると背丈を超えるほど大きくなるため、他の植物が成長する余地が残りません。森の多様性を保つ観点から刈り取る必要があります。

剪定ばさみや手鋸を使って刈りました。

笹は他の森でもよく見る植物ですが、周りの植物と調和しておらず、景観的にもない方が森林の個性が出ていいように思います。

刈っても刈っても生えているので途方もない作業でしたが、作業後はすっきりした印象に変わりました。

間伐

下刈りが終わった後は木を一本選別して、間伐を行いました。

間伐することで高層部から日光が差し込み、他の高木や林床の植物の成長を促します。

オークヴィレッジの森は適度に間伐されているため樹木の間隔が広く、上を見上げると空が見えました。

今回伐採した木は斜面に育っていた、小ぶりな木でした。

まずは木にロープを掛け、チルホールと呼ばれる手動式の小型ウィンチに固定します。この時点で木をどの方向に倒すかを決めておき、木に切り込みを入れていきます。最終的にロープで木を引っ張り、木を倒したい方向に倒せるように想像しながら、作業を行なっていきます。

切り倒す方向が決まったら、次は受け口と呼ばれる切り込みを入れていきます。受け口は木を切り倒す方向(今回なら斜面の下部)に入れます。

一般的にはチェーンソーを使いますが、今回は手鋸で切り込みを入れました。切り込みの深さは木の直径の 4 分の 1 程度。倒したい方向と垂直になるような切れ込みを入れる必要があるため、前面や側面から切れ込み角度や深さを確認しながら少しずつ切り進めていきました。最後に 45 度の切れ込みを入れて、半月状に切り出します。

受け口

受け口を切り出した後は、追い口と呼ばれる切り込みをいれます。

受け口を切った段階では切り込みはせいぜい直径の 4 分の 1 しか入っていないため、木繊維のほとんどはまだ断ち切られていないため、木は自立しています。

追い口は受け口とは反対側の面から、同じく倒したい方向と垂直となるような切れ込みをいれていきます。追い口の切れ込みは受け口よりも少し高い位置を切ります。

こうして、少しずつ木繊維を断つように切り込みを入れていくと、少しずつ木は傾きます。追い口を切り出すと、いつ木が倒れるかわからないため、倒れる方向には立たないよう注意する必要があります。また、追い口を切っている人は全体を把握できないため、別の人が全体を見渡し、木が倒れ始めたら、作業者に周知する必要があります。

あと少しで倒れそうという状態になれば、ロープのテンションを高めて木を倒します。

間伐

木が倒れた後は搬出作業です。

今回は木を 1.5 m 間隔で切り出し、道路沿いまで運搬しました。今回は直径 20cm くらいの細い木でしたが、それでもとても重たかったです。

残った切り株から年輪を数えてみましたが、50 年生の木でした。50 年経っても細いと感じることに木を育てることの大変さを感じました。太い広葉樹はとても貴重であることを再認識しました。

キャンプ

木を伐採した後はキャンプ場で宿泊しました。

塾での毎日はとても慌ただしく、塾生同士でゆっくり話をする機会もあまりありませんでした。

今回のキャンプは塾生間の相互理解を深めるいい機会でした。

彦左衛門

オークヴィレッジ創設者の稲本正さんの本の中で、彦左衛門というミズナラの木が紹介されています。

樹齢が 900 年を超えるという長寿の木で、常々見てみたいと思っていましたが、キャンプの翌日にその機会が訪れました。

猪臥山の登山道を 2 時間ほど歩き、途中で道を外れて林道へ。林道を歩いていると、一際大きなミズナラの木がありました。

てっきり人知れずひっそりと立っているものと思っていましたが、林道沿いに存在感を放って立っていました。

彦左衛門

昔は同じ樹齢の木がたくさん立っていたそうですが、伐採されてしまって残っている唯一の木だそうです。あのサイズの木がたくさん生息していた頃の森を歩いてみたいなと思いました。また、過去に歩いた京都の森や旅行で訪れた屋久島の森はどんな感じだっただろうかと思い返しました。今歩くと、昔とはずいぶん違った視点で楽しめるんだろうな。

猪臥山は他の森ではあまり見なかったブナの木がたくさん生息していました。敷地も広く、間伐も適度にされている森で前回の森林散策で訪れた国有林とはまた違った雰囲気がありました。ブナの葉は光を透過し、黄緑の葉に見えるので、柔らかい印象を受けました。

ぎゅっと中身の詰まった濃い 2 日間で、帰る頃にはへろへろになっていましたが、とても貴重な体験をすることができました。

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